多様性の中での結束
コミュニティ・メンタルヘルス・アウトリーチ協会(以下アウトリーチネット)の前身であるACT全国ネットワークはACT(Assertive Community Treatment)の実践、普及・啓発を行ってきました。その根底には日本の精神保健福祉に対する危機感、そして変革への熱い思いがありました。
しかし10年余りの活動が内向き、閉鎖的であったことは否めず、ACTの制度化そして精神保健福祉の変革をもたらすまでには至りませんでした。
そのような反省と変革への思いを引き継ぎながらアウトリーチネットは発足しました。
アウトリーチネットでは、アウトリーチという方法論のもと理念に賛同したメンタルヘルス分野の多様な方々が集まります。
すでに全国にいる素晴らしい実践を行っている方々と、同質化していくのではなく多様なものとして、対話し高め合い仲間を増やしていくことで、地域にメンタルヘルスサービスの素地を作っていきたいと考えます。
個々の存在は小さくても集まり結束すれば大きな力になります。
みなさんの参加を心からお待ちしています。
挨拶に代えて。
最近ではいろいろな分野で「アウトリーチ」という言葉が使われるようになり、魅力的な実践が豊富に展開されるようになりました。しかし、その影におられる、その善意や正しさに傷ついたり支配されたりしている当事者の数は、決して少なくないようです。
法人設立に至るまで、私たちは常々、出会えたことによって醸し出される“親密さ”の裏腹に、出会うが故に与えてしまう“加害性”や“暴力性”が存在するということを念頭に置きながら、「自分がその人の立場だったらどうなのだろう?」という当事者性を大事にしてきました。
これからは、立場の違いなど関係なく、老若男女問わず、アウトリーチネットがどなたにとっても“こころの安全基地”となれるように組織の運営にも力を注いでいきたいと思います。
そして、汚れた海の水も人の喉に流れる水も等価であるように、皆さまと一緒に“差別や偏見を制御するこころの文化”を育みながら、清濁併せ呑む地域社会の実現を目指していきたいと思います。
何とぞよろしくお願いいたします。
誰も置き去りにならない社会の実現を考える
当事者や家族の方から「自分たちがいざ困ったときに助けてくれる人は誰もいなかった」という声を聞くことがあります。このような声を聞くと、私たちの国の精神保健福祉において、様々な医療や福祉の制度や援助技術をどのように発展しても、それは内輪の議論におわり、最終的に困っている人たちに十分に届いていない、そのような忸怩たる思いに駆られざるを得ません。
国際的には精神保健福祉分野は、脱施設化を経てコミュニティ・メンタルヘルスの充実へと向かっていきました。それは取りも直さず、地域で困っている多様な方々とどう出会い、支援をしていくかという議論とシステムの発展の歴史でもあります。アウトリーチネットは日本におけるこの変化を、後押ししていける組織でありたいと考え、関係者が集い、誕生した組織です。同時に、その「出会い」が専門職による一方的・暴力的なものにならないようにするためにはどうしたらいいかという議論も立場を超えて深めなければならないと考えています。
そのような活動や議論のプラットフォームになれるように本組織は運営をしていきたいと考えておりますので、当事者・ご家族・専門職・関係の方々にぜひ、ご参加・ご協力を頂ければと存じます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
一般社団法人コミュニティ・メンタルヘルス・アウトリーチ協会 目的
当法人は、アウトリーチを通じて、メンタルヘルスの支援ニーズがある人を中心に、社会的孤立状態にある人や、そのリスクがある人、また、その人に関わる人たちが、地域の中で自分らしい暮らしができる社会の実現に寄与することを目的とする。
当法人が定義する「アウトリーチ」とは、リカバリー(recovery)の概念を理解し、訪問を中心に行う「地域生活中心のサービス」(community-based)であり、「その人のあり方を中心に据えた支援」(person-centered)であり、「その人やその人を取り巻く周囲の環境の長所、能力に焦点をあてた支援」(strength perspective)である。
※あ→お順
伊藤 順一郎(メンタルヘルス診療所しっぽふぁーれ)
門屋 充郎 (十勝障がい者総合相談支援センター)
吉川 隆博 (東海大学/日本精神科看護協会)
高木 俊介 (たかぎクリニック)
三品 桂子 (花園大学)
村木 厚子 (元厚生労働事務次官/津田塾大学客員教授)
アウトリーチネット京都事務局
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【担当:久我・角谷】